滅多に更新しない所が。

劉黒あいしてるー！（挨拶）
いつもモノクロばっかなんですが、たまーに波がくる少年陰陽師。
今回籠目編が完結して、主人公主従に大変萌えまくった結果、勢いでSS書きました。
読んでない人は何の事か分からないかもしれないですが…



ご覧になられる方は続きからドウゾ！



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大切なもの

「ただいま車之輔」

橋の上から聞こえた声に妖車は驚きと同時に、嬉しそうに橋の袂から姿を現した。
そこに立っていたのは暫くぶりに見る成長した主人の姿。

『ご立派になられて…やつがれはご主人のお帰りをずっと待ちわびておりました！』

夢殿で会った時よりも少し低くなった声はとても凛々しく聞こえる。
また、背も伸びている様で大分逞しくなっていた。
車之輔はそんな昌浩見るなりぼろぼろと大粒の涙を零す。

「泣き虫な所は変わってないね、車之輔」

笑った表情も前より大人びて見える。
昌浩は車之輔の前まで降りていくと、顔の付いている車輪の前に立ちそっと撫でてやった。
優しい手の温もりに車之輔はガタガタと車体を揺らし、鬼の顔は喜びの表情を浮かべる。
昌浩を見送ってからもうどの位経っただろうか…
車之輔達妖にとってはほんの少しの時間でも、人間の成長は早い。
実際に昌浩はこうして立派に成長して帰ってきた。
それはとても車之輔にとって誇らしい事だ。

「あの時はありがとう車之輔。ちゃんとお礼を言えてなかったね」

昌浩の言葉に車之輔は大きな車輪の顔を左右に揺らす

『いいえ、勿体ないお言葉で御座いますご主人。やつがれはご主人の唯一の式
　呼ばれれば何処へなりとも馳せ参じます！』

車之輔の脇に腰を下ろし川の方を眺める。
そしてゆっくりとあの時の事を口にし始めた。

「俺さ、ずっと車之輔の声が聞こえなくて悔しかったんだ。
　皆聞こえてるのに何で俺だけ聞こえないんだろうって…
　でもあの時、夢殿でお前が来てくれた時、確かに車之輔の声がはっきり聞こえたんだ。
　凄く嬉しかったよ。
　これからも宜しくな、車之輔」

昌浩の言葉を聞くなり大きな牛車の妖は再び涙を零した。

『ごしゅじぃぃん…やつがれはご主人の式になれてとても嬉しく思います。』

「本当にお前は泣き虫だなぁ。俺もお前が式で良かったと思ってるよ。」

車体を撫でながら車之輔を宥めていると、白い獣が昌浩の肩目掛けて飛び降りてきた。
昌浩は反動で前呑める。

「昌浩、晴明が呼んでいるぞ」

「わ、もっくん！」

白い物の怪を胸の前で抱えると、狩衣の裾を直しながら立ち上がる。
昌浩は帰ってきたばかりなんだから少しぐらいゆっくりさせて欲しい、と思いながらも土手を上っていった。

「じゃ、車之輔また来るからな！」

『はい、ご主人もお気をつけて』

バサバサと簾を揺らしながら鬼の顔が優しく微笑みを浮かべた。
おそらく本人的には手を振っているつもりなのだろう。
少しづつ遠ざかる昌浩の背中を見えなくなるまで見送った。
去った後、橋の下へと車体を戻すと空を見上げる。

鮮やかな夕焼けが其処には広がっていた。
今宵もまた、京の都に闇が広がっていく。
愛しい主人の事を思いながら車之輔はゆっくりと瞳を閉じ、自分を必要とする呼び出しが掛かるまで休む事にした。














やつがれは、いつも、いつまでもご主人の式でいたいと思っています…
ご主人が立派な陰陽師になれる様に、少しでもご主人の力になれるように、勤めを果たせるように努力していきます。
こんな気が弱く、泣き虫なやつがれを式にして下さったご主人に少しでも御恩が返せる様に…
ですからどうか、ご無理だけはなさらない様にしてください。




車之輔が好き過ぎて辛い…
何だろうこのマイナーな感じ。